インターンシップが変わった!三省合意とは?
経済産業省、文部科学省、厚生労働省の三省により「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(通称:「三省合意」)が改正され、2025年度卒業予定の大学生、大学院生、短期大学生、専門学校生からその内容が適用されることになりました。この記事では三省合意で改正された「インターンシップ」の考え方とは何か、その基本的な情報を分かりやすくお伝えします。
インターンシップとは?
そもそも「インターンシップ」とは何でしょうか。インターンシップは学生が企業や組織に入り、実際の業務を通じて職業を深く理解するための体験プログラムです。たとえば、担当者やプロフェッショナルに「影」のようについて回り、業務を観察する「ジョブシャドウイング」や、実際に実務の一部を担当しながらスキルや経験を積む「実務体験型」など、様々な形態があります。学生にとってインターンシップは、職場の雰囲気を直に感じ、自分が学んでいる分野の業務を具体的に体験し理解を深めたり、興味ある業界や職種を探求し、視野を広げたりする貴重な経験の場になります。従来のインターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義されていました。しかし改正された三省合意では、「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を体験すること)を行う活動」と定義されました。【引用:経済産業省HPより】
三省合意改正とは?
2023年6月、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の三省合意により、「インターンシップ推進に当たっての基本的な考え方」が改正されました。この改正により、大学生などのキャリア形成支援に関する取り組みが類型化され、改正前には禁止されていた「企業がインターンシップで得た学生の情報を、広報活動や採用選考活動に使用すること」が、一定の基準を満たす場合に限り可能となりました。さらに、インターンシップ制度の質の向上や適切な運営に関する指針も定められ、インターンシップが単なる短期のアルバイトや労働の場とならないよう、教育的な意義が重視され、学生の成長を促進することを目的とした制度が始動します。
三省合意改正後のインターンシップは何が違う?
三省合意改正により、キャリア形成支援に係る取り組み(インターンシップ)は4つのタイプに分類されました。それぞれ「タイプ1」から「タイプ4」まで、内容や特徴、要件に基づいて整理されています。
「タイプ1」と「タイプ2」は、教育的な要素が強く、必ずしも実務体験を伴わないカリキュラムが特徴です。これらは主に学びの場として設計されており、学生が実際に業務を行うことが必須ではありません。そのため、厳密には「インターンシップ」とは呼ばれず、キャリア教育や職業理解の一環とされています。
一方、「タイプ3」と「タイプ4」は、実務体験が必須となっており、学生が業務を通じてスキルや経験を積むことが求められます。これらは本来の意味での「インターンシップ」とされ、学生が実際に企業の業務に参加し、将来のキャリア形成に役立つ実践的な経験を積むことが目的となっています。
このように、改正によって「インターンシップ」と呼べる取り組みは、実務体験を重視した「タイプ3」「タイプ4」に限定されることになりました。では「タイプ1」から「タイプ4」までを、もう少し具体的に確認してみましょう。
【タイプ1:オープン・カンパニー】
「オープン・カンパニー」では、企業が学生に対して自社の業界や業務、職場環境などを公開します。一般的には見学会や説明会等を開催し、実際の職場見学や従業員から直接話を聞くなどの機会が提供されます。就業体験ではなく、あくまで企業や業界を知るための教育の機会として位置付けられています。
【学生のメリット】
- 実際の職場を見学することで、職場環境や企業文化、業務などを理解することができる。
- 業界や企業への興味や関心を更に具体的に高められる。
- 企業担当者との交流を通じて直接アドバイスを得ることができる。
【タイプ2:キャリア教育型】
「キャリア教育」という言葉にはさまざまな意味がありますが、タイプ2「キャリア教育」の考え方は、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育【引用:文部科学省中央教育審議会】」の定義に近いのではないでしょうか。
「キャリア教育型プログラム」は、学生が社会で求められるスキルや職業への理解を深めることを目的としています。実務体験よりも、業界に対する知識を得たり、将来のキャリアについて考えたりするための教育的なプログラムが中心となり、就業体験は任意とされています。
【学生のメリット】
- 自分の適性や興味を確認しながら、進路選択のヒントを得られる。
- 職業選択のための具体的な情報や知識を獲得できる。
- 社会で必要とされる知識やスキルを学び、将来のキャリアに向き合うための価値観を養うことができる。
※更に文部科学省では幼児期の教育から高等教育までを通したキャリア教育・職業教育を推進しています。職場体験・インターンシップ・社会人講話などの体験的な学習を効果的に活用し、地域・社会や産業界と連携しながら、各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動など学校の教育活動全体を通じて、社会的・職業的自立に必要な基盤となる能力・態度を育むこと、「自分らしい生き方を実現するための力を育むこと」を目指しています。【引用:文部科学省HPより】
キャリア教育×HERO:文部科学省 (mext.go.jp)
【タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ】
「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」は、学生が職場で実際の業務を経験しながら、コミュニケーションやチームワーク、問題解決、自己管理、適応力などの「汎用的な能力」や、学業で得た「専門知識」を実際に活用し、自らの適性やその能力を見極める機会を得ることができます。参加期間やその期間中の必須就業体験期間、参加できる学年等細かい取り決めがあります。
【学生のメリット】
- 実務を通じて、自分の強みや弱点を確認できる。
- 学んだ理論や知識を実際の業務にどのように活用できるかを体験し、理解を深められる。
- キャリア形成に役立つ実務経験を積むことで、就職活動でのアピールポイントを得られる。
【タイプ4:高度専門型インターンシップ】
「高度専門型インターンシップ」は高度な専門知識を必要とする分野で行われるインターンシップです。医療、法律、技術開発など特定分野の専門的なスキルを持つ学生が、実務経験を積みながらさらに知識を深める場として提供されます。このタイプでは、実際の業務に深く関与することも多く、高い責任を伴いますが、学生は教育の一環として参加します。
【学生のメリット】
- 高度な専門知識やスキルなど、実務を通じてさらに深められる。
- 専門分野における実際の仕事の流れや要求されるスキルを理解できる。
- 業界での実績を積むことで、将来のキャリアに大きなアドバンテージとなる経験が得られる。
※「タイプ3」「タイプ4」のインターンシップは、一定の要件を満たした場合に限り、企業が取得した学生の情報を「採用・選考活動」で使用する事が可能になります。
まとめ
三省合意に基づく「キャリア教育」や「インターンシップ」には、それぞれ異なる目的と体験が用意されています。これらの違いを理解し、自分の目的に合ったタイプを選び参加することで、最大限のメリットを得ることができるでしょう。さまざまな経験は、キャリアを考えるうえで自分に適した職業や業界を見極める貴重な機会となり、職業意識が高まり、具体的な知識やスキルの目標が定まります。その結果、学びに対するモチベーションも向上します。
さらに三省合意の狙いは、学生が単に「キャリア教育」や「インターンシップ」に参加するだけではなく、それを学びと成長の場として最大限に活用できるようにすることにあります。教育的な価値を高め、適切な労働環境を提供し、企業と大学が連携することで、学生は実践的なスキルを学び、将来のキャリア形成に役立つ経験を積むことが可能になります。私たち企業は「キャリア教育」「インターンシップ」を通じて、本来の目的を果たすとともに、次世代の人材育成に少しでも役に立つことができればと考えています。