パパもママも休業できる!育児にまつわる「休業」
少子化が進み、先日発表された合計特殊出生率(ある期間における女性の出生率を合計したもの→一生のうちで産む子供の数の指標)は1.20ポイントとなり、過去最低でした。少子化に歯止めをかけるための対策の一つとして、仕事と育児の両立を支援する施策が進み、数年前までは取得するにはハードルが高すぎた男性の「育児休業」は法改正を重ねて取得しやすい制度へと改定されています。この記事では出産時に取得できる休業と、松本ESテック株式会社で男性社員が取得した「育児休業」について、取得後アンケートをもとにした社員の声とともにその詳細をわかりやすくお伝えします。
出産する人が取得します「産前・産後休業」(労働基準法第65条)
出産前後の女性労働者は、母体保護のため休業が義務付けられています。その歴史は労働基準法の前身である、工場労働者を保護する目的で施行された「工場法(1911年施行)」が始まりです。この章では出産する女性が取得できる「産前・産後休業」の詳細を確認します。
産前・産後休業の期間
- 産前休業:出産予定日からさかのぼり42日(6週間、多胎妊娠の場合は14週間)前から取得できる休業です。産前休業開始日は「出産予定日」によって決まりますが、産前休業終了日は出産が早まれば産前休業期間は短くなり、出産が遅くなればその期間は延長されます。なお、出産日当日は産前休業期間に含まれます。
- 産後休業:出産予定日が分かると産後休業予定期間も決まりますが、あくまでも「出産予定日」から算出した日程です。正式な産後休業期間は「出産日」を基準とするため、実際取得する期間は、出産日翌日から56日間です。なお、この「産前・産後休業」は労働基準法により取得が業務付けられており、企業も就業させることはできません。(出産後、本人の意思と医師の承諾があれば産後休業6週間以降であれば就業可能です)
産前・産後休業期間中の収入や社会保険の支払い
仕事を休む不安要素の一つである「収入」「支払い」に関するサポート制度どのような仕組みになっているのでしょうか。産前・産後休業期間中の賃金の支払いに関する法律上の定めはありませんが、一般的には無給となり、給与収入はありません。その間の生活費の補填として、申請する事で健康保険から賃金の2/3相当の「出産手当金」を受けることができます。毎月支払いをしている「健康保険料」「年金」は手続きをすることで免除となり、給与収入が無い場合は「雇用保険料」も発生しません。昨年の収入で決定した「住民税」のみ支払いの義務がありますので、支払い方法等は所属している会社等にお問い合わせください。
以下のリンク先は厚生労働省のサイトです。産前産後休業や育児休業の様々な情報、期間の確認、休業期間中の給付金自動概算など、知りたい情報が確認できるので、ご覧ください。
【出典】厚生労働省HP 働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
二人で取得できる「育児休業」
育児休業は生まれたばかりの子どもを育てるため、就労中の両親が一定期間仕事を休むことができる制度です。日本では「育児・介護休業法」によりその詳細が定められており、両親が仕事と育児の両立を可能にするためのサポートがあります。現行制度に至るまでの法改正の流れと、制度について詳しく解説します。
育児休業の歴史
1972年に設けられた「勤労婦人福祉法」では「育児休業」を実施する努力義務の対象者は女性のみでした。1991年、育児法(当時はまだ介護とは別でした)制定時に男女雇用機会均等法の育児休業に関する努力義務は移管され、従業員30人以上の事業所は「育児休業」が義務化されました。1995年の法改正では全ての事業所が育児休業適用対象となるほか、介護休業法を新たに加え、日本の「少子高齢化」問題や育児や介護で仕事をあきらめてしまう人が仕事と家庭を両立できるよう支援する制度になります。更に2005年の法改正では、特別な事情がある場合(保育所に入所できなかったなど)に限り育児休業期間を延長する制度や、一定の要件を満たした有期雇用労働者への制度適用範囲が拡充されます。2010年以降は男性が育児休業を取得する後押しをするための制度でもある「パパママ育休プラス(後述します)」がスタートします。その後数回の法改正を繰り返し、2017年には最長2歳まで育児休業の再延長が可能となり、2022年10月に現行の制度である「出生時育児休業/産後パパ育休」が施行されます。
育児休業を利用できる人は?
「育児休業」は、性別を問わず、正社員に加え、一定の条件を満たすパートタイマーや契約社員は取得する事が可能です。ただし労使協定(労働者と使用者/会社間で結ばれる協定)により、対象者はその会社によって若干異なります。
フレキシブルに休業できる「出生時育児休業/産後パパ育休」(育児・介護休業法)
「出生時育児休業」は配偶者の出産予定日から8週間の期間中、通算28日間取得申請が可能な育児休業です。実際の取得は出生日からが取得可能期間となるため注意が必要です。この出生時育児休業(通称/産後パパ育休)は8週間の期間中であれば取得最大日数28日を2分割して取得したり、労使協定を締結していれば出生時育児休業期間中労務に就いたりすることも可能です。
出生時育児休業の取得例として
- お子さんが生まれた日から2週間、1ヶ月健診当日から2週間の合計28日
- お子さんと奥様が退院した日から4週間
- お子さんが生まれた日から2週間、週3日は休業、2日は半日勤務、半日は休業(労使協定締結済み、稼働日が週5日の場合)
など、家庭と仕事の状況を考えながら取得することもできます。なお、この「出生時育児休業」は「産後パパ育休」と呼ばれている通り、男性が取得することを前提とした制度ですが、養子などの場合は女性が申請することも可能です。
両親ともに取得可能な「育児休業」(育児・介護休業法)
生まれた子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの期間、両親ともに「育児休業」を取得することができます。2回に分けて取得することもできますが、休業期間中の就労はできません。「認可保育園に申し込みをしたが預けることができなかった」など、公の機関が発行した証明できる書類を提示できる場合、または養育予定だった配偶者が養育できない事情が発生した場合は、その後6か月間の育児休業延長が可能となる場合があります。(その後更に6か月の延長ができ、延長は2年まで可能)また、配偶者が育児休業を取得している場合は、母は「出産日以降の産後休業期間+育児休業期間」父は「産後パパ育休期間+育児休業期間」を合計してそれぞれが1年間以内であれば休業が可能となり、その取得期限は子が1歳2か月に達するまで延長される「パパママ育休プラス制度」の利用が可能です。
「出産時育児休業」「育児休業」中の収入は?
どちらの休業も、雇用保険制度の支給要件を満たす場合は、申請することで「育児休業給付金」の支給を受けることができます。支給額は、支給単位期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%です。(ただし、育児休業開始から181日目以降は50%の支給となり、出生時育児休業給付金が支給された日数は、育児休業給付の支給率67%の上限日数の180日に通算されます。)
「出生時育児休業」育児休業者も社会保険免除の制度があります
育児休業取得者は、一定の要件を満たす場合、健康保険と年金の支払いが免除になる期間があります。具体的には
- 育児休業を開始した月~育児休業終了日の翌日が属する月の前月まで
- 休業開始日と終了日が同一月内にあり、月末日に休業していない場合についても、14日以上休業した場合(出生時育児休業中に就業した日数は「14日以上に」カウントされません)
「育児休業」期間は「産前・産後休業期間」同様、住民税は支払いの義務があるため、詳細は所属する事業所にお問い合わせください。
以下のリンク先は東京都労働局のサイトで制度についてとても分かりやすく解説しているのでご紹介します。
【出典】東京都労働局HP【特設ページ】令和6年度改正育児・介護休業法 (mhlw.go.jp)
松本ESテックでの「育児休業」取り組み事例
松本ESテックでは、各工程、各業務とも最小人数で業務が遂行できるようグループ編成されています。そのため、工程内で長期的なお休みを取る社員がでると、同じグループの社員が仕事をカバーする場合もあります。早目に相談し、社内の体制を整えることで休業が実現し、休業前と変わらない状態で職場復帰している社員の「育児休業」の取り組み事例と、業務効率を上げたり、サポート人員を検討したりしながら「育児休業」をサポートした現場の状況をお伝えします。
「育児休業」記念すべき第一号!
2020年、松本ESテックで初めての男性育児休業取得者が現れました。社員アンケートより、当時の状況をお伝えします。
妻と2人だけでそばに助けてくれる親族もなく、上司に相談したところ、前例はないが相談してみよう、といってもらえました。取得が決まり、前倒しでできる仕事を完了させ、引継ぎのための依頼書、報告書を休業前にまとめ、上司に提出しました。休業中は妻と子どもの健康状態の把握や食事の栄養バランスを管理したり、子供の世話や家事全般、産後回復のサポートをしたりする事ができました。仕事は上司のフォローがあり、従来と変わらない状況でスムーズに復職する事ができました。子どもができたら早目に相談しましょう。
「産後パパ育休」取得第1号社員の声です
1人目の時妻が大変そうでした。少しでも力になりたいと思い、「出生時育児休業」取得の相談をしました。上司は背中を押してくれ、その後上長と生産管理部門へ相談し、仕事の調整を行いました。家庭では妻との役割分担を話し合い、日中は子どもの世話やミルク、オムツ替えなどをする事で少しでも妻に寝てもらえるようにしました。これから「産後パパ育休」を取得しようとしている皆さん、初めは休みづらいな、と思うと思いますが、まずは相談してみましょう。子どもの新生児期はあっという間に過ぎてしまいます。私はその短い期間を一緒に過ごす事ができてよかったと思います。
「産後パパ育休」第2号員の声
第一子という事もあり、新生児のうちから触れ合いたかったため先輩に話を聞きながら「出生時育児休業」の取得を申請しました。妻と子どもが帰るまでの間、すぐに対応できるよう家事と二人を迎えるための準備をしました。今は子どもが2時間ごとに起きるので、妻と交代でお世話をしています。大人になって1カ月お休みすることはあまり無い事ですし、家族と一緒にいる事ができる時間はとても大切です。
「育児休業」を後押しする現場より
「育児休業に入る前に・業務内容・仕事を分担する担当者を明確にすることでスムーズな引継ぎが可能になりました。育児休業の取得は家庭と仕事の両立を可能にし、モチベーションUPにもつながると考えています。
「グループ内でOJT体制をとり、オペレーターが複数案件の生産に対応できるよう社員教育を行っているため、技術的な対応ができる体制になっています。人数が不足する場合は時間外やシフトでカバーし対応しました。社員の権利なので取得できて当たり前のように思えますが、休業中に協力してくれる同僚や関係者がいて実施できる事なので、日頃から内部コミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことも大切だと思います。」
お子さんを授かったら、先ずは相談してみてください。
まとめ
いかがでしたか。長い期間の「育児休業」はハードルが高く、上司に相談するのは気が引けてしまうかもしれませんが、短い期間での取得や、仕事と育児の両立ができる(休業中に就業するには企業内での労使協定が必要です)「出生時育児休業/産後パパ育休」なら少しハードルが低く、取得しやすいことがおわかりいただけたと思います。休業を取る人も送り出す人も安心できるよう、松本ESテックでは今後も社内の体制を整え、相談しやすい職場環境を作り、両立支援の社会の仕組みの活用を応援できる準備を進めてまいります。